魚類をモデルとした行動生態学研究の最前線と今後の展望
Behavioral ecology of fishes: recent studies and future perspective
コンビーナー:安房田智司(新潟大理臨海)・桑村哲生(中京大国際教養)
コメンテーター:竹垣毅(長崎大水産)・小北智之(福井県立大)・安房田智司(新潟大理臨海)
1.10:00~10:15 |
趣旨説明:魚類をモデルとした行動生態学
○安房田智司(新潟大理臨海) |
2.10:15~10:45 |
ヨウジウオ科魚類の配偶システムと性淘汰
~観察と実験と,時々,ラボワーク~
○曽我部篤(広島大生物圏) |
3.10:45~11:15 |
ロウソクギンポ雄の配偶成功に偏りをもたらすもの
~ホルモンに依存した繁殖Phaseと雌の非独立型配偶者選択~
○松本有記雄(長崎大院生産科学) |
4.11:15~11:45 |
卵胎生魚類での性淘汰研究
~グッピーにおける配偶前後での繁殖戦略~
○佐藤綾(東学芸大) |
11:45~13:00 |
休憩(昼食) |
5.13:00~13:30 |
魚類の托卵における宿主と托卵者の繁殖戦略と種間相互作用
○山根英征・渡辺勝敏(京大院理)・長田芳和(大教大教育) |
6.13:30~14:00 |
協同繁殖シクリッドの配偶と子育てをめぐる個体間の駆け引き
○安房田智司(新潟大理臨海) |
7.14:00~14:30 |
受精をめぐる競争:繁殖戦術が多様化したシクリッドの場合
○太田和孝(京大理) |
8.14:30~15:00 |
捕食被食関係に影響を及ぼすシクリッドの左右性
○竹内勇一(名大理) |
15:00~15:10 |
休憩 |
9.15:10~16:00 |
総合討論
司会:桑村哲生,コメンテーター:竹垣毅・小北智之・安房田智司 |
プログラムの趣旨
行動生態学は,適応進化の結果として動物行動を理解しようとする学問である.魚類をモデルとした研究は,この分野において重要な役割を果たしてきたが,大きな理由が二つ挙げられる.一つは,魚類生態の多様性である.魚類は,脊椎動物のなかで最も生態が多様化してきた動物であり,行動生態学の研究テーマの宝庫であると言える.もう一つは,研究対象としての扱いやすさである.小型の魚類であれば,野外での行動観察が比較的容易である.また,水槽での操作実験も容易に行える種が多い.近年は,遺伝・生理学的手法の発展から,行動生態学と他分野の融合により,この学問のさらなる発展が見られる.また,急速に自然が失われ,絶滅危惧種の増加や水産有用魚種の個体数減少が起こるなか,行動生態学が保全や水産に果たす役割も大きい.しかし,我が国の魚類学においては,行動生態学の重要性がまだ十分に認識されておらず,分野間での融合研究も少ないと思われる.本シンポジウムでは,魚類行動生態学の最前線で活躍する若手研究者を招き,様々な水域に適応した魚類における最新の研究成果を紹介する.最後に,新しい研究・解析手法が次々と開発される中,今後,魚類をモデルとした行動生態学の展望について考えてみたい.
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