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2024年度魚類学会シンポジウム

2024年度日本魚類学会年会では,以下の2題のシンポジウムを開催します.「ニホンウナギの河川生態と保全:絶滅危惧種選定以降の進展と今後の展望」は,参加費無料です.「奄美大島の絶滅危惧種リュウキュウアユ:30年におよぶ調査研究および保全活動を通して分かってきたこと」は,魚類学会員のみ参加可能です.また,年会参加者は無料で聴講できますが,シンポジウムのみ参加する場合は参加費が必要です.参加費は会員区分,参加形式(対面・オンライン)問わず1,000円です.対面参加に限り当日受付も行います(参加費1,000円).多くの方々のご出席を期待しています.
※詳細はプログラムに記載します.プログラムは7月下旬に「2024年度開催のお知らせ」のページに掲載予定です.

ニホンウナギの河川生態と保全:絶滅危惧種選定以降の進展と今後の展望

日時:
2024年9月9日(月)9:00~12:40
場所:
福岡工業大学(対面参加のみ)
対象:
魚類学会員であるかどうかによらずご参加いただけます.
コンビーナー:
松重一輝(長崎大学総合生産科学域)・望岡典隆(九州大学大学院農学研究院)
連絡先:
松重一輝(長崎大学総合生産科学域(環境科学系);TEL/FAX:095-819-2767;kmatsushige[at]nagasaki-u.ac.jp([at]を@に変更してください.)

【シンポジウムの趣旨】
 ニホンウナギは西マリアナ海嶺南端部に産卵場をもち,生活史の大半の期間を東アジア沿岸の成育場で過ごす.河川は主要な成育場のひとつであり,その環境の保全は個体群の維持・回復に重要である.ニホンウナギは社会的な注目度の高い水産重要種でもあり,河口域から河川上流部まで幅広く分布する高次捕食者である.そのため,河川生態系保全における象徴種やアンブレラ種としての潜在性も備えている.にもかかわらず,産卵場の探索というロマン溢れる研究と比べ,ニホンウナギが河川でいつ,どこで,何をしているか,といった基本的な河川生態に関する研究は後れを取っている.
 2013年,環境省の第4次レッドリストにおいて,ニホンウナギのランクがそれまでの「情報不足」から「絶滅危惧IB類」に引き上げられた.翌年には,国際自然保護連合 (IUCN) からもEN (Endangered) と評価され,レッドリストに掲載された.それから10年以上が経過し,社会的な需要の増大に伴い,ニホンウナギに関する研究は大いに発展している.とくに河川生態と保全に関する研究分野は,多くの研究者が参入し,興隆期を迎えたといえる.
 これまでの研究により,ときには最新の技術を駆使しながら,生息環境,食性,成長,接岸遡上生態,降河回遊生態などの情報が蓄積され,人為的な河川環境の改変による生態への影響や,その解決策が明らかになりつつある.一方で,特定のトピックに関する研究例が増加するなかで,それらを網羅し,整理するコストも増加している.とくに保全の観点からは,最新の知見に基づいた保全活動の方向性や未解決の研究課題について研究者間で議論し,共有する場の必要性が一層高まっているといえる.
 こうした背景を踏まえ,本シンポジウムでは絶滅危惧種選定からの主要な研究トピックに焦点を当て,これまでの研究や保全活動の進展,進行中の取り組みを紹介し,内容を整理することを目的とする.さらに,今後の課題や研究・保全活動の方向性について議論し,ニホンウナギの河川生態と保全について,さらなる発展の道筋を探る場としたい.

【プログラム】

第一部 趣旨説明(講演10分)

1. 9:00~9:10
ニホンウナギ絶滅危惧種選定以降の河川生態研究
松重一輝(長崎大学総合生産科学域)

第二部(講演20分+質疑5分)

1. 9:10~9:35
河川におけるニホンウナギの豊富さに関与する環境要因は見つかるか?
井上幹生(愛媛大学大学院理工学研究科)
2. 9:35~10:00
小規模河川のポテンシャルを探る:ビデオカメラとPITタグを用いた長期モニタリングの結果から
久米 学(石巻専修大学理工学部)
3. 10:00~10:25
全国各地の河川での生態研究:遡上生態と食性を考慮した保全方針
脇谷量子郎(東京大学大気海洋研究所)
休憩 10:25~10:35
 
4. 10:35~11:00
成育環境の質に依存した成長,成熟戦略:河川環境の悪化による生態的帰結を探る
大戸夢木(愛媛大学大学院理工学研究科)
5. 11:00~11:25
亜熱帯域の河川におけるニホンウナギとオオウナギの生息地選択・種組成決定機構:両種の効果的な保全管理にむけて
熊井勇介(東京大学大学院農学生命科学研究科)
6. 11:25~11:50
木曽三川下流域におけるニホンウナギ生態系ネットワークの取り組みと展望
五十嵐美穂(日本工営株式会社)

第三部 総合討論 11:50~12:40(コメンテーター講演10分×2+討論30分)

コメンテーター:
細谷和海(近畿大学)
中島 淳(福岡県保健環境研究所)

奄美大島の絶滅危惧種リュウキュウアユ:
30年におよぶ調査研究および保全活動を通して分かってきたこと

日時:
2024年9月9日(月)10:00―15:00
場所:
福岡工業大学(対面・オンライン配信併用)
対象:
魚類学会員に限ります.年会参加者は無料ですが,シンポジウムのみ参加の場合は参加費(1,000円)が必要です.
コンビーナー:
奄美リュウキュウアユ保全研究会
連絡先:
久米 元(鹿児島大学水産学部;TEL:099–286–4142;kume[at]fish.kagoshima-u.ac.jp([at]を@に変更してください.))

【シンポジウムの趣旨】
 リュウキュウアユは,奄美大島では〝ヤジ〟と呼ばれ,古くから地元の人たちに親しまれ,大切にされてきた.リュウキュウアユは,北海道から屋久島にかけて生息しているアユとは別亜種で,野生個体群は奄美大島でしかみられない.かつては沖縄島にも生息していたが,環境悪化に伴い1978年の記録を最後に絶滅してしまった.現在,沖縄島のダム湖に生息しているリュウキュウアユは,1992年以降,奄美大島産の種苗が放流され,定着したものである.リュウキュウアユとアユは,よく似ているが,胸鰭条数・鱗の大きさなどに差異が認められる.さらに,リュウキュウアユの体長は,約15 cmであるのに対し,アユでは30 cmを超え,アユに比べ小型である.
 リュウキュウアユとアユの分化には,琉球列島の地史が大きく関わっている.第三紀末期から第四紀初期(約260万年前)にかけて,海水面が低く,大陸と陸続きであった現在の琉球弧にあたる場所には連続的にアユが広く分布していたが,更新世中期(約200万年前)に生じたトカラ海峡によって,奄美大島以南の中琉球と南琉球が北琉球および日本列島から隔てられた.その結果,琉球列島のアユは,日本列島のものと切り離され,100万年レベルで遺伝的交流を持たなくなり,リュウキュウアユとして分化したと考えられている.
 現在,リュウキュウアユは環境省,鹿児島県により絶滅危惧種に選定され,大切に保護されている.1991年から鹿児島大学が,2002年からは奄美リュウキュウアユ保全研究会が中心となり,毎年の生息数についてモニタリングしている.これまでに得られた調査結果から,個体数は生息河川ごとに毎年大きく変動すること,地元の方々と協同した保全活動無くしては今後の個体群の存続は極めて厳しいことが分かってきた.本シンポジウムでは,30年におよぶリュウキュウアユの生態調査・研究を通してこれまでに分かってきたこと,地元の方々との本亜種の保全に向けた取り組みについて紹介する.

【プログラム】

第一部 趣旨説明

1. 10:00~10:20
30年間のリュウキュウアユの研究及び保全活動の総括
四宮明彦(奄美リュウキュウアユ保全研究会会長)

第二部

1. 10:20~10:40
リュウキュウアユの“発見”,命名,そして保全へ
西田 睦(琉球大学)
2. 10:40~11:00
奄美大島におけるリュウキュウアユの生活史
久米 元(鹿児島大学水産学部)
3. 11:00~11:20
亜熱帯島嶼環境でリュウキュウアユが獲得してきた諸形質について
井口恵一朗(長崎大学)
4. 11:20~11:40
沖縄島の陸封個体群の生活史から奄美のリュウキュウアユを見る
立原一憲(元琉球大学)・堀部 翔(島嶼研)
5. 11:40~12:00
認知進化生態学の視点から見るリュウキュウアユ
安房田智司(大阪公立大学)
休憩 12:00~13:00
 
6. 13:00~13:20
保全遺伝学・保全ゲノム科学からみたリュウキュウアユ
武島弘彦(福井県里山里海湖研究所)
7. 13:20~13:40
奄美大島におけるリュウキュウアユの保全に向けた取り組み
米沢俊彦(鹿児島県環境技術協会)
8. 13:40~14:00
リュウキュウアユ保全に関する社会学的な視点から
黒田 暁(長崎大学)

第三部 総合討論 14:00~15:00