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2019年度魚類学会シンポジウム  
2019年度日本魚類学会年会にて開催されるシンポジウムは一般公開シンポジウムとなります.シンポジウム当日のみ参加は無料です.

日本魚類学会若手の会キックオフシンポジウム~学会の持続的な発展を目指して~
The kick-off symposium for ISJ Young Researchers Association - Toward the sustainable development of ISJ
日時:
2019年9月20日(金)14:30~18:00
場所:
高知大学朝倉キャンパス共通教育棟
コンビーナー:
魚類学会若手の会 世話人:川西亮太(北大地球環境)・木村祐貴(大阪環農水研)・邉見由美(京大フィールド研)・日比野友亮(北九州市博)・宮崎佑介(白梅学園短大)
 
 
【シンポジウムの趣旨】
 本シンポジウムは平成31年度中に設立予定の「日本魚類学会若手の会」のキックオフイベントとして開催するものである.平成30年に創立50周年を迎えた日本魚類学会は今日の魚類学の発展に大きく貢献してきた.学会として,今後より一層魚類学の発展・普及を推し進めていくためには,歴史の中で培われてきた伝統・知見を継承しつつ,日進月歩の技術や理論を積極的に取り入れていくことが重要であり,それを将来担っていく若手人材の確保と育成は中心的課題の1つといえる.
 他学会ではこの課題に対処するため,学生・若手研究者間の交流を促進する組織として「若手の会」を設置する学会も少なくなく,分野融合的な研究の誘起に成功している事例も見受けられる.また,若年層の人口減少や大学の人員・研究予算削減が深刻化する中で,活気ある学会を維持するためには,アカデミックポスト以外の職に就いても研究対象に携わりながら活躍できる道を模索していく必要がある.
 そこで本シンポジウムでは第一部として他学会の若手の会運営者を招聘して「若手の会の活動内容とその意義」についてご紹介いただく.実際の活動のなかで見えてきた課題や未来像をふまえて,魚類学会若手の会として取り組んでいくべき事項や目指すべき方向について議論する.また,第二部では多様な職種における業務やライフワークの中で研究や活動を続けておられる方々に「研究に携わりながら生きていく」というテーマでお話をいただく.アカデミックポストに就かずとも,業務やライフワークの中で魚類に携わっていくための方策について議論し,魚類学を志す学生会員がキャリアパスを考える上での一助としたい.総合討論として「若手が活きる学会とは」というテーマでパネルディスカッションをおこない,魚類学会の持続可能な発展のために学生・若手研究者が果たすべき役割を参加者とともに考える.ぜひ多くの学生・若手会員に参加いただき,自由闊達な議論の場とするとともに,研究者間のネットワーク形成と今後の研究活動の活性化の契機としたい.
 
プログラム

14:30-14:40 開会の挨拶・趣旨説明

I. 他学会における若手の会の現状
 1. 14:40-15:00  多毛類若手の会の活動事例
冨岡森理(利尻町立博物館・多毛類若手の会)
 2. 15:00-15:20 応用生態工学会若手の会の活動事例
久加朋子(北海道大学・応用生態工学会若手の会)
 3. 15:20-15:35 日本魚類学会若手の会概要説明
日比野友亮(北九州市立自然史・歴史博物館・若手の会会長)

II. 研究に携わりながら生きていく
 4. 15:45-16:05  自然保護NGOの立場で、研究に携わりながら生きていく~環境省版植物レッドリスト作成から、種の保存法改正へのロビー活動~
藤田 卓(日本自然保護協会)
 5. 16:05-16:25 在野で行う研究活動について
伊藤誠人(環境機器株式会社)
 6. 16:25-16:45 これからの地方公共団体における生物学者の役割
中島 淳(福岡県保健環境研究所)
 7. 16:45-17:05 水族館における研究活動
園山貴之(しものせき水族館)

III. パネルディスカッション
8. 17:15-17:55 司会進行 川西亮太(北海道大学・若手の会副会長)

17:55-18:00 閉会の挨拶

 
スウェーデンのVega号が採集した140年前の日本産標本群の意義―分類学的研究に基づく標本の役割を再考:過去の生物多様性復元,今日の環境保全,未来世代への記録と保存
Significance of the Swedish Vega Collection: Japanese specimens from 140 years ago ― a case study reviewing the past, present and future roles of specimens for taxonomic analysis: reconstructing the biodiversity of the past, conserving the environment of today, and preserving a record for research by future generations
日時:
2019年9月23日(月)9:00~13:00
場所:
高知大学朝倉キャンパス共通教育棟
コンビーナー:
滝川祐子(香川大学農学部)
 
 
【シンポジウムの趣旨】
 2019年はVega号来日140年にあたる.Vega号は北東航路の航海に世界で初めて成功した後,1879年に日本に寄港した.本シンポジウムでは,2015-2017年度の科学研究費補助金で実施した「スウェーデンのVega号資料に基づく明治初期の日本研究と琵琶湖環境の復元」の研究成果を共有するものである.研究の内容は,スウェーデン国立自然史博物館にて,1879年にVega号が持ち帰った日本産標本資料の解析である.具体的には各動物群の専門家が,博物館での種の同定に基づき,①琵琶湖で収集した淡水魚類・水産無脊椎動物標本,②横浜,神戸,長崎周辺で収集した海水魚類標本と非海産貝類を中心とした無脊椎動物標本に関する標本調査,採集記録との照合を行った.特に,琵琶湖で収集した無脊椎動物標本からは,混入した藻類や水生昆虫から, 当時の南湖の生態系復元に寄与する新しい知見が得られた.また海産魚では,産地初記録となる神戸で収集したアオギス標本が得られたほか,東京産のアオギス標本を含む貴重な情報を得ることができた.
 シンポジウムの目的は,1)Vega号標本の共同研究の成果を報告する;2)研究成果を1つの事例として,今後の調査や将来の研究のために標本資料の意義を再考する,の2点にある.研究成果を事例に用い,次の5点から標本の意義を再確認し,話し合う場を提供したい.①分類学に基づく生物種の変遷;②各標本群と採集地から推察される140年前の環境や生態情報の復元;③外来種侵入に関する知見;④探検航海資料の生態学・保全生態学への応用;⑤博物館の役割,長期的に標本資料を保管する意義・重要性,などである.
 明治初期の横浜,神戸,琵琶湖,長崎を中心とする魚類・水産無脊椎動物標本群は,国内外でも非常に稀な標本資料である.調査の結果Vega号標本は,近代化により日本の沿岸域や琵琶湖が様々な人為的改変を受け,大きく変貌する前の1879年時点の生態系情報を復元しうる重要な学術資料であることが判明した.現地調査を行った参加者が発表・報告を行い,関心のある研究者らと情報共有し,意見交換する場としたい.
 
プログラム

第1部:Vega号標本の共同研究の成果報告
 1. 9:00-9:15     趣旨説明・Vega号標本の収集経緯の概要
滝川祐子(香川大・農)
 2. 9:15-9:45 Vega号が収集した海産魚類標本が示唆する明治初期の日本の沿岸環境
瀬能 宏(神奈川県博)・吉野哲夫(美ら島財団)
 3. 9:45-10:15 Vega号が収集した日本産淡水魚の概要
藤田朝彦(㈱建設環境研究所)・川瀬成吾(大阪経済法科大)・細谷和海(近畿大名誉教授)
 4. 10:15-10:45 琵琶湖産淡水魚の分類研究におけるVega号標本の位置づけ
川瀬成吾(大阪経済法科大)・藤田朝彦(㈱建設環境研究所)・細谷和海(近畿大名誉教授)
 5. 11:00-11:30 琵琶湖の無脊椎動物相の変遷からみたVega号標本の位置づけ
西野麻知子(元びわこ成蹊スポーツ大)
 6. 11:30-12:00 貝類標本が示すVega号の日本での足跡および混在資料の重要性
中井克樹(琵琶湖博物館)
 7. 12:00-12:15 Vega号標本に含まれる魚類以外の脊椎動物,地衣類,その他の生物
滝川祐子(香川大・農)

第2部:Vega号標本を事例とした総合討論
 8. 12:15-13:00  総合討論
議論のテーマとして
①分類学に基づく生物種の変遷
②各標本群と採集地から推察される140年前の環境や生態情報の復元
③外来種の侵入に関する知見
④探検航海資料の生態学・保全生態学への応用
⑤博物館の役割,長期的に標本資料を保管する意義・重要性などを想定.

 
古代湖における魚類の適応進化と種多様性創出
Adaptive evolution of fishes in the ancient lakes with reference to the creation of species diversity
日時:
2019年9月23日(月)9:00~17:00
場所:
高知大学朝倉キャンパス共通教育棟
コンビーナー:
木下 泉(高知大)・後藤 晃(北の川魚研)
 
 
【シンポジウムの趣旨】
 古代湖とは,古い湖の中で新生代第三紀終りから第四紀始めに形成され,その後,長期に渡って他の水域からほぼ隔離されて来た淡水湖のことをいう.こうした古代湖としては,アフリカの地溝湖群,シベリアのバイカル湖そして本邦の琵琶湖がよく知られている.それぞれ,熱帯域,亜寒帯域そして温帯域に位置するこれらの湖では,各湖特有の魚類分類群が適応放散をとげ,多くの固有種が派生・進化したことが明らかになっている.アフリカのタンガニイカ湖,バイカル湖および琵琶湖に関しては,魚類群集に注目した別個のシンポジウムが,かつて魚類学会でも開催されたことがあるが,歴史,環境および生息魚類の異なる複数の古代湖間での固有性を比較し,その全体像を俯瞰することは未だ試みられていない.そこで今回のシンポジウムでは,気候帯,湖の起源,環境(特に水深)および魚類群集がそれぞれ異なる古代湖を比較検討することによって,湖間での魚類の適応放散の相違点ならびに共通点を見出し,これらの魚類の種多様性創出要因とその進化機構についての理解を深めたい.
 
プログラム

9:00-9:05 開催挨拶 木下 泉

I. 基調講演(座長:木下 泉)
 1. 9:05-9:40     古代湖における魚類の適応放散に関する研究の意義
川那部浩哉(元・琵琶湖博)

II. アフリカの古代湖におけるシクリッド類の適応放散と進化(座長:後藤 晃)
 2. 9:40-10:05    タンガニイカ・シクリッド類の分子系統関係と腸管の巻き方
山岡耕作(元・高知大)
 3. 10:05-10:30   BBTM(バイカル,琵琶,タンガニイカ,マラウィ)湖の湖沼特性と魚類
遊磨正秀(龍谷大)
 4. 10:30-11:00   ゲノム比較から迫るビクトリア湖産シクリッドの適応放散のメカニズム
二階堂雅人(東工大)
  11:00-11:15   質疑

III. バイカル湖におけるカジカ類の適応放散と種多様性創出(座長:遊磨正秀)
 5. 11:15-11:40   カジカ類の起源と適応放散・種多様性
後藤 晃
 6. 11:40-12:05   コットコメフォルス属とコメフォルス属における沖合環境への幼期適応
木下 泉
 4. 12:05-12:30   カジカ類における婚姻形態と精子進化
安房田智司(大阪市大)
  12:30-12:45   質疑

IV. 琵琶湖におけるいくつかの魚類の沖合環境への適応と種分化(座長:東 幹夫(元・長崎大))
 8. 13:45-14:05   分子遺伝解析に基づく固有種を中心とした琵琶湖産魚類の起源と歴史
田畑諒一(琵琶湖博)
 9. 14:05-14:30   琵琶湖における魚類の適応進化
渡辺勝敏(京都大)
 10. 14:30-14-50   在来コイの沖合環境への適応
馬渕浩司(国環研)
 11. 14:50-15:10   沖合型コイ科魚類ホンモロコの回遊生態
亀甲武志(滋賀水試)
 12. 15:10-15:30   ウツセミカジカの生活史多型と種内分化
田原大輔(福井県大)
  15:30-15:45   質疑

V. 総合討論(座長:木下 泉・渡辺勝敏)
   16:00-17:00

 
野生メダカを守る ~基礎研究から保全の提言まで~
Conservation of wild medaka -Basic and applicable studies-
日時:
2019年9月23日(月)14:00~18:00
場所:
高知大学朝倉キャンパス共通教育棟
コンビーナー:
北川忠生(近畿大学農学部)・小林牧人(国際基督教大学)
 
 
【シンポジウムの趣旨】
 小川の中を可憐に泳ぐ様子が愛でられ,多くの童謡に歌われるなど,メダカ(メダカ種群:Oryzias latipes species complex)は多くの日本人にとって最もなじみの深い魚の一つとして知られている.しかし近年,多くの野生の生息域で個体数が減少し,地域個体群が絶滅するなど,危機的な状況に陥っている.
 野生のメダカの個体群を保全・再生するためには,それらが本来持っている基礎な生態や遺伝的特性(地域個体群の固有性)を把握することが不可欠である.メダカは実験モデル生物として様々な研究が行われているが,保全に必要となるこれらの基礎的な知見は十分とはいえない.また,野生メダカが減ってしまう要因や,減ってしまった野生メダカを復元するための手法についても,十分な検討が行われていない.さらに,こうして研究者が野生メダカの基礎生態や保全の必要性,方法論を案出しても,多くの地域では具体的な保全活動が進みにくかったり,活動があっても正しい方法がとられていなかったりという課題もある.これは,我々がメダカとともに歩んできた文化の背景や,未来にメダカを残すことの本当の意義が十分に認識されていないこと,すなわち保全のためのモティべーションとゴールが共有できていないためではないだろうか.
 特に,近年では,同じ日本のメダカから作りだされたヒメダカなどの改良品種がペットや研究,教育の素材として広く普及している.これらは,我々が連綿と育んできたメダカ文化の延長線として今後の発展が期待され,歓迎しうる存在である.ただし,こうした品種改良メダカは放流による遺伝的撹乱や本来のメダカという生き物の曲解につながるといった,野生メダカとの軋轢も生じ得る.野生メダカと改良品種の共存の道筋をつけることも,現代の我々に課された研究課題のひとつである.
 こうした背景を踏まえ,本シンポジウムではメダカの基礎生態や遺伝的特性の把握と,それらに基づいた保全・再生の方法論,保全の啓発の方法について議論することを目的とする.
 
プログラム

趣旨説明
14:00-14:10 北川忠生(近畿大学農学部)

第一部 野生メダカの基礎研究
 1. 14:10-14:40   野生メダカの繁殖生態と保全 -メダカはどこで卵を産むか-
小林牧人(国際基督教大学)
 2. 14:40-15:10   自然環境下での交雑実態からみた日本産メダカ2種の関係
-ミナミメダカとキタノメダカは恋に落ちる?-
入口友香 (一般財団法人 自然環境研究センター)
 3. 15:10-15:40   野生メダカ集団に生じている遺伝的撹乱の実態 -放流メダカは外来魚-
北川忠生(近畿大学農学部)

第二部 野生メダカを守る
 4. 15:50-16:20   東日本震災後の仙台の野生メダカの保全の取り組み
棟方有宗(宮城教育大学教育学部)
 5. 16:20-16:50   東京のメダカは今 - 調べる・伝える・守るささやかな取組み -
多田 諭(公益財団法人東京動物園協会 葛西臨海水族園)
 6. 16:50-17:20   野生メダカ保護への提言
細谷和海(近畿大学名誉教授)

総合討論と閉会の挨拶
  17:20-18:00 小林牧人(国際基督教大学)