宮崎県一ツ瀬ダム湖におけるオオクチバスの食性
○日向あかね・日南里子・内海 登(日向海洋高等学校)
オオクチバスは,スズキ目サンフィッシュ科に属する北米原産の肉食性淡水魚で,日本各地の止水域を中心に在来の生物群集に悪影響を与えている.そこで,我々は宮崎県の一ツ瀬ダム湖において,本種の食害の程度や範囲を検証する目的で食性調査を行った.
標本は2011年9月から2012年8月まで毎月1回,ルアー釣りにより採集した156個体である.採集個体は現場で氷殺して持ち帰り,標準体長と体重を測定したのち解剖した.摘出した胃の内容物について,可能な限り低位の分類群まで同定を行い,その個体数と湿重量を記録した.また,池に生息する魚類を網モンドリ,釣り,投網,タモ網で採集した.これらは現場で種同定と計数を行い,その場で放流した.
オオクチバスの胃からは,ヌマチチブが年間を通じて最も高頻度で出現した(出現率76.2%).オイカワ(出現率40.6%)やスジエビ(出現率39.7%)も高頻度で出現した.これら3種は,被食個体数や重量比でみた場合も上位3種に位置した.また,7月にはコイやフナ属の稚魚がよく出現し,25 cm以上の大型個体からは年間を通じて疑似餌であるワームの切れ端がよく出現した.季節的な傾向としては,夏や秋には魚類の出現率が高く,冬から春にかけてスジエビや水生昆虫の出現率が高くなった.一方で,生息魚類調査では,オオクチバスによく捕食されていたもの以外に,ブルーギルやワタカが多数採集された.このことから,ブルーギルやワタカはオオクチバスに捕食されにくいと思われ,オオクチバスの食害による影響の程度は生物によって異なると考えられる.また,コイとフナ属については,30cm以上の大型個体のみが採集された.コイやフナ属は,成魚はオオクチバスに捕食されないものの,仔稚魚は盛んに補食されるため再生産はできておらず,現在生息している成魚の寿命が尽きれば,絶滅する危険性がある. |