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シンポジウム等  
淡水魚保全における河川行政との連携
Collaboration with river administration for freshwater fish conservation


日 時: 2017年9月18日(月)13:00~17:00
場 所: 北海道大学函館キャンパス
コンビーナー: 久米学(京大フィールド研)
鬼倉徳雄(九大院農)
 
   
【シンポジウムの趣旨】
 魚類学会に所属する研究者が,淡水魚保全の現場に関わることは,魚類学を担う者としての責務と言える.そして,このような現場に携わる場面が増えるにつれて,我々研究者にとっては,専門的な見地から如何に有効な助言をできるのかという点で,その存在意義が問われることとなる.その一方で,研究者と河川や湖沼などの淡水魚保全に関わる各種行政との考え方の相違から,淡水魚保全の現場において,施策が有効に機能しない状況や,研究者の提案が行政に受け入れられにくい状況が生じることもあるだろう.しかしながら,研究者と行政が良好な関係を保ちながら連携することで,淡水魚保全をより効果的に,より効率的に行われることが望まれる.

 そこで本シンポジウムでは,行政と連携して淡水魚保全に向けた取り組みを有効に機能させるにあたって研究者が留意するべきことを明確にすることを目的とする.まず,行政と上手く連携し,淡水魚保全が成功した事例を紹介する.次に,行政の立場から,淡水魚保全に対する考え方を紹介する.最後に総合討論を通じて,淡水魚保全をより促進するために,行政との連携の仕方について議論を深めたい.そして,魚類学会の若い世代の研究者が,淡水魚保全の現場でより活躍していける道筋を探る場としたい.
 
 

プログラム

 1. 13:00-13:10  趣旨説明:これまでの淡水魚保全における研究者と行政との関係
久米学(京大フィールド研)
 2. 13:10-13:35 防災と干潟保全の両立を目指して~徳島県那賀川汽水域における事例~
乾隆帝(山口大院創成)
3. 13:35-14:00 九州での淡水魚保全:行政と共働したいくつかの取り組み
鬼倉徳雄(九大院農)
4. 14:00-14:25 円山川流域における自然再生事業-コウノトリの野生復帰地における試み-
佐川志朗(兵庫県大院地域資源)
5. 14:25-14:50 河川,都市,農地における淡水生物保全の事例
永山滋也(岐大流域)
6. 15:00-15:25 行政主導の生物多様性モニタリングにおける研究者とNGOの役割
横井謙一(日本国際湿地保全連合)
7. 15:25-15:50 ミヤコタナゴの積極的保全にどのように取り組むか?-淡水魚類の保全における環境行政の役割-
鈴木規慈(千葉県生物多様性セ)
8. 15:50-16:15 河川整備における魚類生息場の保全アプローチ-多自然川づくりの現状と今後の方向性-
萱場祐一(土木研究所)
9. 16:15-17:00 総合討論
 
ドジョウの自然史 ~誰もが知っている魚,誰も知らないその正体~
Natural history of the loaches
-Everyone knows about the fishes, but none knows their real characters-


日 時: 2017年9月18日(月)9:30~16:40
場 所: 北海道大学函館キャンパス
コンビーナー: 北川忠生(近畿大学大学院農学研究科)
中島 淳 (福岡県保健環境研究所)
 
【シンポジウムの趣旨】
 水田や用水路など身近な環境に生息し,食用や釣り餌などにも使われたり,古くから童謡にも歌われたりと,日本人ならば誰もが知っていてなじみの深い魚であるドジョウMisgurnus anguillicaudatus.近年,遺伝学的な研究が進むなかで,隠蔽種の存在,雑種形成,雌性発生,倍数体,クローン集団,遺伝子移入など様々な現象がおこっていることが分かってきた.

 また,河川の上流から下流までの広範囲に生息し,様々な斑紋をもつことから観賞魚としても人気のあるシマドジョウの仲間(シマドジョウ属Cobitis, アジメドジョウ属Niwaella).これらのシマドジョウ類では,国内だけでも近年続々と新たな種がみつかっているだけでなく,倍数性や核型多型,隠蔽種,遺伝子移入や特異な形態的,生態的進化が認められている.

 日本に生息するこれらドジョウとシマドジョウ類,一見すると異なるグループに見えるが,ユーラシア大陸に生息する近縁種との比較の中で,両者のドジョウが別物ではなく進化的に複雑に絡み合う関係性を持っていることも分かってきた.その一方で,近年の海外からの種や集団の移入と国内への定着も進行しており,どれが在来でどれが外来なのかも分からなくなっているものもある. 果たしてこれらのドジョウ類は何者なのか?どこから来たのか?彼らに何がおこってきた(いる)のか.

 またこれらのドジョウ類の多くは,近年,絶滅危惧種になっている.しかしながら,そもそも何を守るべきか,その実体すら曖昧なものもある.これらを保護するためにも,その実態を把握しておく必要がある.

 誰もが知っている魚であるが,実はその正体はいまだに分かっていないことが多いドジョウの仲間たち.本シンポジウムでは,ドジョウの仲間の中でもドジョウとシマドジョウ類を含むドジョウ科に焦点をしぼり,現在までに分かっている進化系統,分類,細胞遺伝,生態,保全の知見を集約し,今後の彼らの正体解明に向けた研究の方向性について議論する.
 

プログラム

第一部
 1. 9:30-9:45 趣旨説明
北川忠生(近畿大学大学院農学研究科)
 2. 9:45-10:30 ドジョウ類の類縁関係と進化傾向
斉藤憲治(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 東北区水産研究所)
3. 10:30-11:00 ドジョウ科の適切な分類とは?ドジョウの連立方程式を解く!
中島 淳(福岡県保健環境研究所)
4. 11:15-12:00 ドジョウクローンの生殖機構と交雑起源
荒井克俊(北海道大学大学院水産科学研究科)
5. 12:00-12:30 実験動物としてのドジョウ
藤本貴史(北海道大学大学院水産科学研究科)

第二部
 6. 13:30-14:00 ドジョウ類の種をのりこえた系統地理
北川忠生 (近畿大学大学院農学研究科)
7. 14:00-14:30 ドジョウのなかにひそむドジョウ,形態的・生態的分化
岡田龍也 (近畿大学大学院農学研究科)
8. 14:45-15:15 変わったドジョウ,アジメドジョウ
藤井亮吏(岐阜県里川振興課)
9. 15:15-15:45 外来種問題としてのドジョウ
清水孝昭(愛媛県水産研究センター)
10. 15:45-16:30 総合討論
11. 16:30-16:40 総括 
中島 淳(福岡県保健環境研究所)
 
北日本底生魚類相を彩る環北太平洋要素種群の適応と進化
Adaptation and evolution of benthic fish fauna in northern Japan in relation to the North Pacific Rim


日 時: 2017年9月18日(月)9:00~17:00
場 所: 北海道大学函館キャンパス
コンビーナー: 宗原弘幸(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター臼尻水産実験所)
古屋康則(岐阜大学教育学部)
安房田智司(大阪市立大学大学院理学研究科)
矢部 衞(北海道大学大学院水産科学研究院)
 
【シンポジウムの趣旨】
 親潮の影響を強く受ける北日本周辺海域は,暖流の影響下にある関東以南とは大きく異なる固有の魚類相を形成する.この海域の主な構成種は,千島列島,カムチャツカ半島,アリューシャン列島,アラスカ,カナダにいたる「太平洋の首飾り」と言われる北部北太平洋沿岸域に分布中心を持つ魚類群である.こうした分布特性を持つ魚類は,環北太平洋要素種群と呼称される.カジカ類,ダンゴウオ類,ゲンゲ類,アイナメ類などが,その代表的な魚類である.これらの魚類は,新生代に断続的に起きた地球規模の環境変動を経て,地域的な絶滅と適応放散を遂げながら,当海域で現在最も種的に繁栄し,一部は北極海から大西洋,深海性種では南太平洋への進出にも成功している.個体群が小さく分布域が限られているなど採集が困難な魚種が多く,南日本に比べて,環北太平洋要素種群を対象とした研究は,常に後発であった.しかし,近年,これらの魚類について,系統分類学,分子系統学,進化生態学,あるいは分子生物学においても注目すべき成果が報告されてきた.そこで本シンポジウムは,こうした魚類研究の最新の知見を紹介するとともに,境界研究や融合研究など分野の枠を超えた新しい研究展開の機会とするため企画した.
 

プログラム

趣旨説明 9:00-9:05
宗原弘幸(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター臼尻水産実験所)

第一部 北日本底生魚類相を特徴づける魚類の系統分類学 (座長:宗原弘幸)
 1. 9:05-9:30 カサゴ目の系統分類学の変遷
今村 央(北海道大学大学院水産科学研究院)
 2. 9:30-9:55 カジカ亜目魚類の系統分類学
矢部 衞(北海道大学大学院水産科学研究院)
3. 9:55-10:20 ゲンゲ亜目魚類の系統分類学
篠原現人(国立科学博物館)

第二部 極東固有種群の生物地理と分子系統・分子分類 (座長:矢部 衞)
4. 10:25-10:50 ニジカジカグループの分子系統と系統地理
野原健司(東海大学海洋学部)
5. 10:50-11:15 日本周辺域のダンゴウオ科魚類の生態と生物地理
阿部拓三(南三陸町農林水産課)・ 大友洋平(元北海道大学大学院環境科学研究科)
6. 11:15-11:40 北西太平洋におけるマユガジ亜科魚類の進化プロセス
佐久間 啓(日本海区水産研究所)
7. 11:40-12:05 環境DNAを通して観る,北の海の生物と多様性
荒木仁志(北海道大学大学院農学研究院)

第三部 アイナメ属のゲノム進化と適応 (座長:古屋康則)
8. 12:50-13:15 アイナメ属の系統と半クローンの起源
川口(木村)幹子(一般社団法人 MIT)
9. 13:15-13:40 半クローンの細胞遺伝学
◯鈴木将太(北海道大学大学院環境科学研究科)・荒井克俊・藤本貴史(北海道大学大学院水産科学研究院)・三宅翔太(東京都小笠原水産センター)・宗原弘幸(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター臼尻水産実験所)
10. 13:40-14:05 人為的環境改変を利用するアイナメの繁殖生態
宗原弘幸(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター臼尻水産実験所)

第四部 カジカ類の適応と進化(座長:矢部 衞)
11. 14:10-14:35 カジカ上科魚類の分子系統
富樫孝司(元北海道大学大学院環境科学研究科)
12. 14:35-15:00 交尾型カジカ類の生殖様式の進化-雄卵保護から卵寄託へ
古屋康則(岐阜大学教育学部)
13. 15:00-15:25 交尾行動と精子競争が駆動するカジカ類の精子の進化
◯伊藤 岳(新潟大学大学院自然科学研究科)・安房田智司(大阪市立大学大学院理学研究科)
14. 15:25-15:50 アナハゼ類の卵寄託:その特異な産卵行動と産卵管の進化
安房田智司(大阪市立大学大学院理学研究科)

第五部 寒冷性魚類の分子適応(座長:安房田智司)
15. 15:55-16:20 不凍タンパクの分子生物学
津田 栄(産業技術総合研究所)
16. 16:20-16:45 カジカ科魚類の寒冷適応
山崎 彩(東北大学大学院生命科学研究科)

総合討論と閉式の挨拶
  16:45-17:00 安房田智司(大阪市立大学大学院理学研究科)