日本魚類学会 English
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2012年度日本魚類学会年会シンポジウム
バイカル湖におけるカジカ類の起源、適応放散と種分化
Origin, adaptive radiation and speciation of sculpins in Lake Baikal


会場:共同研究棟多目的ホール
日時:2012年9月24日(月)9:00~16:30
コンビーナー:後藤 晃(北海道教育大)・木下 泉(高知大)
   
I. 開催趣意
 1. 9:00-9:15 バイカルカジカ類の研究経緯と概要
後藤 晃(北海道教育大)
   
II. 起源・適応放散・種分化
 2. 9:15-9:40 バイカル湖の物理・生物的環境の特徴およびカジカ類の形態的・生態的多様性
バレンティナ G. シデレワ(動物学研究所RAS)
3. 9:40-10:05 バイカルカジカ類の起源と系統関係
後藤 晃(北海道教育大)・横山良太 (水研セ増養殖研) ・バレンティナ G. シデレワ(動物学研究所RAS)
4. 10:05-10:30 バイカルカジカ類の遊泳性魚類における仔稚魚の形態と分布の特徴
木下 泉(高知大)
5. 10:30-10:55 浅水性バイカルカジカ類の生態
宗原弘幸(北大FSセ)
10:55-11:05 <コーヒーブレーク>
6. 11:05-11:30 底生性カジカ類の適応放散と種分化:プロコッタス属
横山良太(水産総合研究センター)
7. 11:30-11:55 半遊泳性カジカ類の適応放散と種分化:コットコメフォルス属
高橋 洋(水産大学校)
8. 11:55-12:20 バイカル湖におけるヨコエビ類の種分化
益子計夫(帝京大学)
9. 12:20-12:45 バイカル湖における巻貝類の多様性,生態および適応放散
タチアナ Ya. シトニコワ(陸水学研究所RAS
  12:45-14:00 <昼食休憩>
   
III. 総合論議:コーディネーター(後藤 晃・木下 泉・酒井治己(水産大学校))
10. 14:00-14:25 コメンテイター1)バイカルカジカ類の進化研究の面白さ
西田 睦(東大大気海洋研)
11. 14:25-14:50 コメンテイター2)熱帯域の古代湖におけるシクリッド類の進化
高橋鉄美(京都大理)
12. 14:50-15:15 コメンテーター3)バイカルカジカ類の種間系統を解く試みから
馬渕 浩司(東大大気海洋研)
15:15-15:30 <コーヒーブレーク>
  15:30-16:30 フリーディスカッション
   
[シンポジウムの趣旨]
 東シベリアに位置するバイカル湖は世界でもっとも古く(約3千万年前)、もっとも深い淡水湖(1,640m)であり、現在15科33属61種・亜種の魚類が分布する(そのうち55種・亜種は在来)。この魚類相の中でもっとも種多様性が高いのは湖の浅所から最深部にまで生息しているカジカ類(一般に、バイカルカジカ類と呼ばれる)である。彼らは、3科(カジカ科、アビッソコッタス科、コメフォルス科)12属33種から構成されており、その幅広い水深帯と広大な沖合帯での生息に相応して多様な形態、生態、生殖様式を有している。そのため、バイカルカジカ類は古代湖における魚類の適応放散・種分化の好例であると言われてきたが、熱帯域の古代湖であるビクトリア湖やタンガニーカ湖におけるシクリッド類の研究に較べると、その進展は著しく遅れている。
近年における分子系統研究によって、バイカルカジカ類は単系統群であり、その起源年代も以前の見積と異なって250万年~500万年前とそれほど古いものではないことが明らかになりつつある。しかし、彼らがどのような祖先種に起源し、どのように本湖の深所や沖合に適応放散し、またその過程でいかに種分化したのかについてはまだほとんど明らかにされていない。
本シンポジウムでは、1990年代初頭から約20年間にわたって日本とロシアの研究者による共同研究として進められてきた研究の経緯と、起源、適応放散、種分化などの研究成果について発表・論議することによって、バイカルカジカ類の進化史の総合的な理解を深めるとともに、今後の研究課題を検討する。