2011年3月11日の震災から,もう5年目を迎えている.ここで発生した津波は人的被害のみならず,当然ながら野生生物にも甚大な影響を与えた.津波は,地震国・日本で何度も繰り返されてきた自然現象であり,彼らはその進化の歴史の中で,今回以上の天変地異を何度も受け,あるものは消滅し,またあるものは今日まで生き続けてきたといえる.こうした劇的な撹乱が生物に与える影響を明らかにすることは,その種の進化や生物多様性の形成を知る上で重要なテーマである.本講座では,魚類に津波が与えた影響に加えて,現行の復興事業がもたらしうる影響に関する知見・情報を広く参加者に解説・報告を行う.さらに,ここでの意見交流を通じて復興の現状を周知し,多くの守るべき水環境への理解を深め,生物多様性の保全に貢献することを目的とする.
プログラム
- 第一部 講演:復興事業における魚類の保全
- 講演1:沿岸域の仔稚魚からみた震災と復興工事の影響 朝日田 卓(北里大)
講演2:津波の中の淡水魚:天変地異と適応放散 森 誠一(岐阜経済大)
- 第二部 重篤な被災地・岩手県大槌町からの報告
- 報告1:大槌町の水文学的研究 鷲見哲也(大同大)
報告2:ストロンチウム同位体からみる水とイトヨ 札本 果(京大生態研セ)
報告3:津波で誕生した湿地植生の行方 星野義延(東京農工大)
報告4:南三陸国道における湧水河川の保全 安田吾郎(国交省東北地整)
- 第三部 パネルディスカッション
- 「変わるものと変わらないもの:復旧事業(盛り土と防潮堤)の中の水環境」
コーディネーター:森 誠一(岐阜経済大)
パネリスト:
・佐々木 健(大槌町教委)
・鷲見哲也(大同大)
・安田吾郎(国交省東北地整)
問い合わせ:森 誠一
〒503-8550 岐阜県大垣市北方町5-50
岐阜経済大学地域連携推進センター
電話/FAX:0584-77-3511/0584-81-7807
電子メール:smori@gifu-keizai.ac.jp
日本魚類学会会長 矢部 衞 |