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標準和名検討委員会の
概要
 
提案書・意見書  
意見募集  
標準和名の改名
について
 
魚類の
新標準和名候補名の
公表前流布行為の
抑制に関する提言
 
魚類の新標準和名候補名の公表前流布行為の抑制に関する提言  
   標準和名検討委員会では,下記提言をとりまとめて2011年度第1回評議員会に提出し、承認されましたのでここに全文を掲載します.公表前流布行為の具体的な事例については同評議員会の議事録を参照してください(学会ウェブページの「会員専用ページ」に掲載。会員のみ閲覧可能).

 魚類の標準和名は分類学的単位に与えられる固有かつ学術的名称1)であり,新たな命名は学術雑誌やそれに準ずる媒体2)に掲載される分類学の論文等(適切な場)において,当該の分類学的単位を認識できる記載や図を伴い(分類学的単位の定義),それが新しい名称であることを明示(新称の付与)して行われるべきものです.このように標準和名の提唱は分類学的単位に対する命名行為であり,学名の命名と原理的には同じであるとの観点から,分類学の進展(例えば1種と思われていた魚類が複数種に分割される場合)に伴う名称の混乱を避けるため,命名の基準となる標本を指定したり,さらには様々な分野の利用者への配慮から語源について言及するなどの試みも行われています.しかしながら,命名の実際は多様かつ複雑であり,日本魚類学会の標準和名検討委員会では,ガイドラインや諸規則等の策定を目指して活動しているところです.
 近年,新標準和名候補名が論文等により公表3)され,誰もが認めうる標準和名となる以前にマスコミやインターネット等を通じて流布される事例が確認されていますが,そうした行為は新名称提唱の独創性を損なうだけでなく,いつ,誰が,どこで提唱した名称なのかが不明確になるなど,混乱や誤解を招くおそれがあります.実際,候補名が公表されず,標準和名とは認められないまま水族館や博物館のような社会教育施設で使用されたり,魚類の専門書に掲載されるなど,教育の現場だけでなく研究者間においてさえも混乱が生じています.このような標準和名の安定性を揺るがす事態の拡大を強く憂慮し,魚類学会の会員・非会員にかかわらず,魚類の研究者の良識4)に照らして候補名の公表前の流布は厳に慎むべき行為として認識すべきであることをここに提言します.なお,本提言は上記観点の標準和名を対象としたものであり,地方名や商品名のような一般的な和名は含まれないことを申し添えます.
日本魚類学会
標準和名検討委員会
委員長 瀬能 宏


1)魚類の標準和名の定義等について(答申)」を参照のこと.標準和名は例えば種という分類学的単位に対して提唱されるものであり,学名に対して与えられるものではないことに留意する必要がある.学名が決まらない種に標準和名が存在するのはこの原理による.標準和名は学名に連動しないという言明も同様である.
2) 学会が発行する学会誌,大学や博物館等の紀要,専門性の高い図鑑やそれに類する出版物などが該当する.広報誌等の普及啓発を主目的とした出版物,記者発表資料や個人的なホームページはこれに当たらない.
3) 公表とは新標準和名が提唱された論文等が掲載されている媒体の出版を意味する.学術大会における口頭発表やその要旨集は,学名と同様,標準和名の命名上の公表に当たらず,そこでは新名称を使用すべきではない.
4) 標準和名の命名にあたっては,学名のような命名規約がないからこそ提唱者にモラルが求められる.  

 
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