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京都スタジアム(仮称)の建設推進に関する要望書に対するご回答とご説明 |
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平成25年12月24日
保津町自治会長
塚田 勇 様
日本魚類学会自然保護委員会
委員長 細谷 和海
平素は亀岡市に生息いたします国天然記念物・環境省絶滅危惧IA類のアユモドキの保全にご尽力いただいておりますことを、心より感謝し、敬服申し上げます。
近畿地方で唯一、亀岡市にアユモドキが今なお生息しておりますことは、ひとえに、豊かで、また厳しい自然とともに生きてこられた皆様の深いご理解と献身的な活動の賜であります。これは現在、魚類および野生生物の保全活動の数少ない素晴らしい事例として、日本全国に知られるものとなっております。私ども日本魚類学会や関連学会に所属する複数の専門家も、長らく、直接、間接的に皆様、また亀岡市、京都府、関連省庁の活動に対して微力を注いでまいりました。
そのように大変有名で貴重な保全活動が行われている皆様の地域におかれまして、平成24年末に、京都府と亀岡市が大規模スポーツ施設(スタジアム)を建設する計画を発表いたしました。その計画内容と経緯を目にし、これまで亀岡市における皆様の長年の保全活動を知る、私ども日本魚類学会をはじめ、全国の専門家団体が多数、アユモドキほか貴重な水田周辺生態系の保全の観点から深い懸念を表明してまいりました。私どもは決して亀岡市にスタジアムを建設することについて反対するものではありません。しかし、亀岡市が専門家や関連省庁との検討すら経ずに提案した保全策は、専門的立場から、どうあっても見過ごすことができないほど内容に乏しく、アユモドキ等の将来に懸念を抱かざるをえないものであったため、我が国の魚類専門家の責任として、亀岡市と京都府に対して、ご意見を申し上げてきたものです。
私どもや他の学会等からの要望書が、スタジアムに大きな期待を託しておられる地域の皆様の胸を深く痛める結果となりましたことを心からお詫び申し上げます。しかし、これはそもそも何ら実現性の根拠もないまま、スタジアム建設とアユモドキが共生できると盲信し、こともあろうかそれを皆様に約束し、事を運んできた亀岡市長栗山正隆氏をはじめとするスタジアム建設を進めてこられた方々に起因することはいうまでもありません。また短い期間に、建設用地の提供を計画させ、競わした京都府知事山田啓二氏が市にこのような無理を強いたことも指摘しておかなければなりません。
私どもの考えは以下のとおり、きわめて単純です。皆様が先駆的、献身的に進められてきたアユモドキの保全活動は、すでに全国から賞賛され、感謝されるに値するものであり、「これまでの努力が仇となった」と皆様に思わせるような事態を決して招いてはならないと強く考えます。同時に、これまでの皆様の長年の努力が無駄になってしまうことも絶対に避けなければなりません。そのためには、思い込みのみに基づく賭け事のような対策に、アユモドキ等の運命を委ねてはならないと考えます。
亀岡市以外の地域でのアユモドキの絶滅に対して、この度、専門家の無力さについてご批判をいただきました。このことは真摯に受け止め、大いに反省し、今後できうる限りの努力をしてまいりたいと考えるものです。ご周知のように現在府市が協同で設置しております環境保全専門家会議においても、わずかな期間でスタジアム建設とアユモドキ等との共生策を提案しなければならないというきわめて困難な責務のもと、懸命な検討が続けられています。私ども、この専門家会議の委員以外の専門家もまた、今後より積極的に、この問題について真摯に検討し、発言していくことをここにお約束いたします。
以下に、いただきました要望書について、ご回答いたします。
- 要望1.
- 京都スタジアム(仮称)が平成28年度末までに建設できるよう、すみやかに必要な手続きを進めていただきたい。
- 回答1.
- スタジアムの建設に関して、私どもにできる手続きはもともとございません。
- 要望2.
- これを機に国のアユモドキ保護増殖事業計画や府のアユモドキ保全回復事業計画に基づき、地域の農業者などに負担を押し付けないアユモドキの生息環境を作っていただきたい。
- 回答2.
- 地域の皆様への負担をできるかぎり軽減し、真に地域と共生できる環境改善を進めていけるよう、日本魚類学会に所属する研究者も、亀岡市、京都府、また環境省、文化庁、農林水産省、国交省に対して、専門家として貢献していけるよう、今後も努力してまいります。
- 要望3.
- 公的な管理ができる「共生ゾーン」の整備により農地や水路がなくなっても魚たちが安心して生息できる環境の創出を早急に願いたい。
- 回答3.
- 永続的なアユモドキ等の存続のために、どのような環境条件が必要であるかをまず科学的に明らかにし、思い込みや実現性の乏しい計画に決して走ることがないよう、日本魚類学会に所属する研究者が英知を絞って協力してまいりたいと考えます。
- 要望4.
- 今日までアユモドキの保護活動に携わってきた保津町住民に対し、十分な説明をいただきたい。
- 回答4.
- 私どもは、地域の皆様がこれまで献身的に進めてこられたアユモドキの保全活動から多くのことを学んでおり、皆様の活動が全国から賞賛され、感謝されるに値するものと信じております。また今後の調査、検討、検証に基づいて、スタジアムとアユモドキ等との共生が保証されたうえであれば、スタジアム建設になんら口を挟むものでもありません。これまでの皆様の長年の努力が無駄になってしまうことを絶対に避け、さらに、アユモドキの存続に多大な貢献をなさってこられた皆様の地域に、アユモドキを近畿地方から絶滅させたという汚名がかかることの決してないよう、専門的立場からの貢献を行ってまいりたいと考えております。
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