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「豊かな東京湾の再生を目指して―アオギス再生特別委員会報告書(案)」 |
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に関する意見書 |
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2005年3月24日
農林水産大臣
島村 宜伸 殿
「豊かな東京湾の再生を目指して―アオギス再生特別委員会報告書(案)」に関する意見書
日本魚類学会は、貴省所管の水産庁が絶滅に瀕するアオギスを東京湾の環境再生のシンボルとして位置づけることに反対するものではありません。アオギスがかつては脚立釣りという釣り文化を生み出し、漁業資源としても利用されていた点を考慮すれば、一般市民への啓発効果という点で適した魚種であることに異論はありませんし、何よりも絶滅が危惧される海産魚の保全と東京湾の環境復元を目指す取り組みは、類を見ない先進的な事例として高く評価されるべきものと考えています。しかしながら、『アオギス再生特別委員会報告書(案)』および標記の件に関するパブリックコメント募集時に公表された議事録によれば、下記の点についての調査あるいは議論が不十分なことは明白であり、2005年11月に計画されている研究放流は、保全生物学的観点から時期尚早であると思われます。水産庁におかれましては、これらの点について再考の上、東京湾の自然再生を図るのに相応しいアオギス再生計画を進められますよう、具申する次第です。
日本魚類学会
会長 西田 睦
1 絶滅判断について
昭和51年の調査記録以降、発見情報はないとされていますが、アンケート調査によって富津市上総湊沖では昭和60年代まで釣れていたとの情報があるとされています。絶滅の判断は放流の是非を問うための最も重要な基準であり、もしアオギスが残存していた場合、その仔稚魚もしくは成魚が出現すると推定される水域での集中的な科学的調査を複数年継続した上で行うべきではないでしょうか。
2 実効的な放流調査に関する議論がないまま放流が提案されていることについて 今回の放流は当面の研究放流調査であり、定着を必ずしも目的とせず、中期的なスパンでの本格的な再導入に向けての基礎的な情報を得るために行うものとされています。しかしながら、現在の計画にある1000(~2000)個体規模の放流により、それが複数回行われる計画であるにせよ、必要とされるさまざまな生物学的特性を調べることができるのでしょうか。委員会では標識方法の簡単な議論程度しか行われておらず、放流が是認されるための最も重要な根拠であるはずの生物学的調査の内容の妥当性や実現可能性については全く議論されておりません。このような状況下で放流を強行することには、自然科学・水産資源管理のいずれの側面においても意義を認めがたいと判断されます。
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