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オオクチバス等サンフィッシュ科3種による水生生物の被害に関する
  アンケート調査について
 
 
2004年12月14日
日本魚類学会自然保護委員会
外来魚問題検討部会

 自然保護委員会外来魚問題検討部会では,「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づく特定外来生物の選定作業(対象はオオクチバス)における資料とする事を目的として,2004年11月に標記のアンケート調査を行った。本調査の趣旨・概要・注意点については下記の通りである。なお,本調査の結果は,2004年12月7日に行われた,第2回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(魚類)オオクチバス小グループ会合において提出された。

【趣旨】

 オオクチバスはその生物的特性から,侵入先水域において水生生物に悪影響を与えることが強く示唆されている。しかし,本種の生息域の拡散が急激であったこと,その大部分において水域の管理者や地域住民・自治体等の知らない間にいつのまにか侵入していたこと,生息域拡散の時期と全国的な自然環境悪化の時期が重なること等の理由から,本種による水生生物の被害を定量的に把握することは困難であり,これまで研究報告例も多いとは言えない。しかし,日本全国の川や湖沼と関わってきた研究者や生物愛好家等は,多くの水域でオオクチバス等外来魚の侵入後,水域の生物が減少したり消失する様を目の当たりにしており,その概況は把握していると考えられた。そこで今回,オオクチバス等サンフィッシュ科3種による水生生物の被害が考えられた事例を広く収集し,これらの魚類による被害水域が少なくともどれだけあるのかを把握することを目的として,アンケート調査を行った。


【調査・解析方法の概要】

 全国の水生生物研究者および都道府県の関係部署に,オオクチバス・コクチバス・ブルーギルによって水生生物が被害を受けた事例について,電子メールあるいは文書で調査を依頼した。調査項目は以下の通りである。
「水域名およびその所在地」・「サンフィッシュ科3種それぞれの生息有無と侵入時期」・「被害を受けた水生生物」・「被害を判断した根拠」・「サンフィッシュ科3種の侵入時期前後における著しい環境改変の有無」
 その回答結果に基づいて,被害の程度を「顕著」「あり」「軽微」「不明」に大別し,集計を行った。被害程度の評価基準は以下の通りである。
・顕著:「被害を受けた水生生物」の少なくとも一種以上について「絶滅」「激減」「ほとんど見られなくなった」等の記述がなされていること。
・あり:「被害を受けた水生生物」について少なくとも一種以上記載されているもの,および「減少」と記述されているもの。
・軽微:被害が軽微である旨が記述されているもの。
・不明:被害の有無について調査を行っていないなどの理由から,「被害を受けた水生生物」欄が空白のもの,あるいは不明と記述されているもの。および,被害の根拠が単なる「捕食風景の目撃」や「胃内容物として出現」など,量的な減少報告を伴わない記述だけで構成されているもの。
 集計の結果,全国の320箇所もの水域から,環境の大きな改変が無いにも関わらずサンフィッシュ科3種の侵入後,水生生物が被害を受けた事例が寄せられた。被害を受けた水生生物の中には,種の保存法や環境省および各都道府県において,絶滅の危険があり保護を要すると指定されている生物も多くみられた。オオクチバスだけが生息し,コクチバスやブルーギルが生息しない水域でも,同様に環境の改変が無いにも関わらず,113箇所もの水域で希少生物を含む水生生物が被害を受けていた。これらの事例は,日本全国の様々な水域において,オオクチバスが単独でも水生生物に被害を与えていると判断する材料として充分と考えられる。集計結果の詳細については,資料(PDF:224KB) を参照頂きたい。


【注意点】

※この調査は,サンフィッシュ科3種,特にオオクチバスによる「被害事例」を選択的に収集したものであり,全国の水域を無作為に抽出したものではない。したがって,本集計結果の事例数を比率に計算し,「オオクチバス生息水域の○○ % 以上で被害」などと使用することは科学的に明らかな誤りであり,またそのような表現は我々の意図するところではない。
※環境改変の有無についても同様であり,環境が悪化していないのに水生生物が減ってしまった事例が選択的に多く収集されている可能性がある。
※この調査では,自治体や研究機関,個別の研究者による調査等で把握された概況が収集されており,学術的な水準にはばらつきがある。


【本件に関する問い合わせ先】

〒108-8477 東京都港区港南4-5-7
東京海洋大学海洋科学部海洋環境学科
日本魚類学会 自然保護委員会 外来魚問題検討部会
丸山 隆(部会長)
TEL 03-5463-0531; FAX.03-5463-0531
e-mail: maruyama@s.kaiyodai.ac.jp

〒250-0031 神奈川県小田原市入生田499
神奈川県立生命の星・地球博物館
瀬能 宏
TEL 0465-21-1515; FAX 0465-23-8846
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