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「長良川河口堰開門調査に係る要請」 |
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平成23年12月26日
愛知県知事 大村秀章 殿
名古屋市長 河村たかし 殿
岐阜県知事 古田 肇 殿
三重県知事 鈴木英敬 殿
国土交通大臣 前田武志 殿
環境大臣 細野豪志 殿
独立行政法人水資源機構 理事長 甲村謙友 殿
日本魚類学会会長 後藤 晃
日本魚類学会は,環境の悪化など魚類の生息を脅かす原因の究明やその結果の公表を通じて,水域の生物多様性の保全を重要な使命の一つとしています.本学会は,昨年10月に名古屋で開催された「生物多様性に関する条約」の第10回締約国会議(COP10)において採択された「名古屋議定書」を前進させ,「愛知ターゲット」を実現するために力を注ぎたいと考えており,愛知県の長良川河口堰検証専門委員会が提案した「5年以上の河口堰開門調査実施」を強く支持します.
長良川は流路延長166kmにおよぶ一級河川でありながら本流にダムの無い清流でしたが,1995年より河口堰が運用され,汽水性の魚類や川と海を回遊する魚類の生息環境を著しく変化させました.愛知県による河口堰検証専門委員会の報告書にあるように,河口堰湛水域ではヨシ帯が激減し,カニ類やゴカイ類なども激減もしくは絶滅しており,汽水性の魚類も多くの生息場を失ったことが明らかとなっています.報告書が提案するような5年以上の長良川河口堰開門調査が実現すれば約35kmにもおよぶ河川感潮域を大規模に復元する世界にも類を見ない試みとなり,その間の生物多様性の著しい回復が見込めます.
また,汽水域の魚類だけでなく,川と海を回遊する魚類についても,開門調査は重要な自然再生の試みとなります.河口堰にはさまざまな魚道が設置されているにもかかわらず,長良川中流域において海から遡上するさまざまな魚種の個体数が減少したことを示すデータや中流域下部で産卵したアユの仔魚の生残が妨げられていることを示す研究結果があります.報告書に示されるさまざまなデータは沿岸への影響も示唆しており,開門調査をおこなうことで検証されることにもなるでしょう.生物多様性の回復という面においては,長良川河口堰開門による負の影響はあったとしても小さいと想定され,その一方でメリットは計り知れないものがあります.愛知県と名古屋市による開門調査の提案を契機として,岐阜県と三重県,そして国の機関や関係者が,将来の環境および後世代のために残すべき貴重な自然を認識し,生物多様性条約の保全と復元の責務を果たすことで国際社会に誇れる事業を実現されるように強く要望します. |
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