日本魚類学会 English
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ユニマット不動産による西表リゾート開発の中断と環境影響評価の実施を求める要望書  
  環境大臣 鈴木俊一殿

日本魚類学会会長 松浦啓一

  沖縄県西表島の浦内川は、広大なマングローブが発達し、日本最大級の亜熱帯生態系を有する河川で、環境省によって日本の重要湿地500のひとつに選出されています。同河川は、これまでに目立った開発行為を免れてきたことから、河川本来の形態を今にとどめると同時に、下記の1から6の特徴を有する希有な河川です。また、河川からは、これまでに約360種の魚類が記録されており、国内では最も種多様性が高い河川でもあります。その中には、この水域だけでしか記録のない10種を含め、注目すべき魚類が多数含まれることがわかっています(添付資料参照)。

  1. 環境省指定の絶滅危惧種(IA類:4種;IB類:8種;II類:2種)が14種生息する。
     
  2. レッドリストに将来掲載される可能性のある種が13種生息する。

  3. 浦内川以外からは記録のない魚類が10種分布している。

  4. 学術上は未知の種が5種生息し、今後も新たな発見が十分に予想される。

  5. マングローブ汽水域を稚魚・未成魚期の成育場として利用している水産上重要な種が多数生息する。
     
  6. 全出現種約360種のほとんどは周縁性淡水魚と生活史の一時期に海と河川を往復する通し回遊魚である。後者は河口付近の汽水域を移動の際の生理的順応のために利用しており、これらの中には主たる生息場所が淡水域にあり、汽水域での順応が生存上特に重要になると思われる魚が24種含まれる。

現在、浦内川河口から隣接の月が浜にいたる地域に、(株)ユニマット不動産による大型リゾート開発(85758平方メートル)(25942坪)が進行しています。この計画は、沖縄県が環境影響評価を実施しないまま、2002年10月25日付で許可したものです。このままでは絶滅が危惧される魚類だけでなく、せっかくこれまで健全に維持されてきた魚類群集や水産上重要な魚類資源にも悪影響が及ぶことが強く懸念されます。日本魚類学会はこの事態を重く見て、以下の事を要望します。
 
   
 
  1. 事業者は、リゾート開発の進行を一時中断し、その全体計画と営業内容から予測される自然環境・地域社会への影響を客観的・科学的に評価して公表すること。
  2. 自然環境への影響評価のために「保全対策委員会」を組織すること。委員会には日本魚類学会が推薦する専門家ならびに公的機関の専門家が含められること。
  3. 計画の進行や営業の継続に伴う影響をモニタリングし、自然環境に改変がみられた場合はすみやかに改善策を講じること。モニタリングや改善策の検討は上記委員会が主導で行い、その詳細を公表すること。
 
  < 本意見書についての問い合わせ先 >  
  〒041-8611 函館市港町 3-1-1
北海道大学大学院水産科学研究科育種生物講座 内
日本魚類学会 自然保護委員会
委員長 後藤 晃
TEL 0138-40-5536; FAX 0138-40-5537
E-mail: akir@pop.fish.hokudai.ac.jp
 
 

〒250-0031 神奈川県小田原市入生田 499
神奈川県立生命の星・地球博物館 内
日本魚類学会 自然保護委員会
副委員長 瀬能 宏
TEL 0465-21-1515; FAX 0465-23-8846
E-mail: senou@nh.kanagawa-museum.jp

 
  < 添付資料 >  
 

1.環境省によるレッドリストに掲載されている絶滅危惧種

 ○絶滅危惧IA類(国内全29種のうち4種)

  ウラウチフエダイ(渓流域に生息)

  アゴヒゲハゼ(マングローブ林に生息)

  コンジキハゼ(マングローブ林に生息)

  コマチハゼ(マングローブ林に生息)

 ○絶滅危惧IB類(国内全29種のうち8種)。

  ヨコシマイサキ(渓流域に生息)

  ニセシマイサキ(渓流域に生息)

  シミズシマイサキ(渓流域に生息)

  ツバサハゼ(渓流域に生息)

  タナゴモドキ(湿地や細流に生息)

  タメトモハゼ(湿地や細流に生息)

  ルリボウズハゼ(渓流域に生息)

  キバラヨシノボリ(渓流域に生息)

 ○絶滅危惧II類(国内全18種のうち2種)。

  ナガレフウライボラ(渓流域に生息)

  ジャノメハゼ(マングローブ林に生息)

2.レッドリストに将来掲載される可能性が高い種(13種)

  オグロオトメエイ(浦内川汽水域に生息)

  ナミダカワウツボ(浦内川汽水域に生息)

  ゼブラアナゴ(月が浜に生息)

  ボラ科の1種(属は日本初のもの)(渓流域に生息)

  アカメ属の1種(月が浜から浦内川河口に生息)

  アトクギス(月が浜や浦内川河口に生息)

  イソギンポ属の1種(浦内川河口に生息)

  ヒルギギンポ(マングローブ林に生息)

  カワギンポ(マングローブ林に生息)

  タメトモハゼ属の1種(湿地や細流に生息)

  カワクモハゼ(汽水域に生息)

  イトヒキハゼ属の1種(浦内川汽水域に生息)

  ゴマハゼ属の1種(マングローブ林に生息)など

3.日本では浦内川だけから記録がある魚種(10種)

  オグロオトメエイ(浦内川汽水域に生息)

  ゼブラアナゴ(月が浜に生息)

  ナミダカワウツボ(浦内川汽水域に生息)

  ボラ科の1種(属は日本初のもの)(渓流域に生息)

  アカメ属の1種(月が浜から浦内川河口に生息)

  アトクギス(月が浜や浦内川河口に生息)

  シミズシマイサキ(渓流域に生息)

  イソギンポ属の1種(浦内川河口に生息)

  コマチハゼ(マングローブ林に生息)

  イトヒキハゼ属の1種(浦内川汽水域に生息)

4.学術上未知の種(5未記載種)

  ヘビギンポ属の1種(月が浜や浦内川河口に生息)

  イソハゼ属の1種(月が浜や浦内川河口に生息)

  ニラミハゼ属の1種(浦内川河口に生息)

  カワクモハゼ(浦内川汽水域に生息)

  オオメワラスボ科の1種(属は日本初のもの)(浦内川河口に生息)

5.稚魚・未成魚期に成育場として利用している水産上重要な種(16種以上)

  リュキュウドロクイ

  ギンガメアジ属魚類

   ギンガメアジ、カスミアジ、オニヒラアジ、ロウニンアジ

  フエダイ科魚類

   ゴマフエダイ、オキフエダイ、ニセクロホシフエダイなど

  クロサギ科魚類

   セッパリサギ、ホソイトヒキサギ、ミナミクロサギ

  クロダイ属魚類

   ミナミクロダイ、ナンヨウチヌ

  ホシミゾイサキ

  アイゴ科魚類

   アイゴ、ゴマアイゴ

6.通し回遊魚の内、淡水域に生息する種(24種)

  オオウナギ

  タニヨウジ

  イッセンヨウジ

  ナガレフウライボラ

  ボラ科の1種(属は日本初のもの)

  ウラウチフエダイ

  ヨコシマイサキ

  シミズシマイサキ

  オオクチユゴイ

  ユゴイ

  ツバサハゼ

  テンジクカワアナゴ

  タナゴモドキ

  タメトモハゼ

  タメトモハゼ属の1種

  ルリボウズハゼ

  ボウズハゼ

  ナンヨウボウズハゼ

  タネカワハゼ

  イワハゼ

  ゴクラクハゼ

  シマヨシノボリ

  ヒラヨシノボリ

  ナガノゴリ