日本魚類学会自然保護委員会 日本魚類学会トップページ
自然保護委員会の概要  
ガイドライン  
モラル  
シンポジウム  
提案書・意見書  
資料・書籍  
魚雑掲載記事  
「ヒナモロコに関する緊急要請」
 
 
平成19年1月27日

環境大臣 若林 正俊 殿

日本魚類学会会長 松浦啓一

 ヒナモロコを「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の指定種とすることに関する緊急要請

 ヒナモロコは環境省レッドデータブックにおいて絶滅危惧IA類に指定され、現在、種の保存法に指定されているいかなる種と比較しても絶滅の危険性が高い種と考えられます。本種は、1960年代まで日本国内では博多湾と有明海に注ぐ平野部の水系に分布していましたが、1980年代には都市開発や農地開発により激減し、現在では久留米市(旧田主丸町)の竹野地区にしか生息していません。一時は絶滅したと考えられていましたが、1994年にこの地区において再発見されました。以来、約10年間、地権者とボランティアの方々の努力によってこの地区のヒナモロコは守られてきましたが、生息地はわずか数百メートルの素堀の農業用水路(土水路)に限られています。その生息地がなくなると、わが国のヒナモロコは絶えてしまいます。
 現在、同地区では福岡県により圃場整備事業が開始され、農業用水路の改修が実施されようとしています。すでに絶滅している他地域での経緯から、本種は、水田に連絡する素堀の農業用水路が失われると急激に減少し、絶滅に至ることが分かっています。現在の生息地は本種存続の最低限の条件を満たしているに過ぎず、わずかな改修も絶滅する危険があります。竹野地区の農業用水路改修が計画通り実施されれば、絶滅は免れないと予想され、工事の回避以外に本種を保護する方法はないと考えます。
 ヒナモロコは日本、中国、朝鮮半島に分布し、約1万年前までつながっていた大陸と日本列島の関係を示す重要な自然遺産でもあります。このような歴史的にも学術的にも貴重な希少生物が生息地の改変により絶滅しようとしている現状に対し、早急に対策を施すことは、国民共通の財産を守ることのみならず、生物多様性条約を批准しているわが国の責務でもあります。上記のことから日本魚類学会では貴省に対し、以下の要請を行う次第です。

1)ヒナモロコを、早急に“絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律”の指定種とすること。
2)ヒナモロコの生息地の現況保全と拡大、および系統保存をはかること。
3)事業主体である福岡県に対し、本種の保護について実効性のある指導を行なうこと。


福岡県知事 麻生 渡 殿

日本魚類学会会長 松浦啓一

 久留米市(旧田主丸町)竹野地区のヒナモロコ生息地保全に関する緊急要請

 環境省のレッドデータブックにおいて絶滅危惧IA類に指定されているヒナモロコは、福岡県久留米市(旧田主丸町)にしかみられない貴重な淡水魚です。国外では中国、朝鮮半島にも分布し、約1万年前までつながっていた大陸と日本列島の歴史的関係を示す重要な自然遺産でもあります。
 ヒナモロコは1960年代まで日本国内では博多湾と有明海に注ぐ平野部の水系に分布していましたが、1980年代には都市開発や農地開発により激減し、現在では久留米市(旧田主丸町)の竹野地区にしか残っていないと見られます。一時は絶滅したと考えられていましたが、1994年にこの地区において再発見されました。以来、約10年間、地権者とボランティアの方々の努力によってこの地区のヒナモロコは守られてきましたが、生息地はわずか数百メートルの素堀の農業用水路(土水路)に限られています。その生息地がなくなると、わが国のヒナモロコは絶えてしまいます。
 現在、同地区では圃場整備事業が開始され、農業用水路の改修が実施されようとしています。すでに絶滅している他地域での経緯から、本種は水田に連絡する素堀の農業用水路が失われると急激に減少し、絶滅に至ることが分かっています。現在の生息地は本種存続の最低限の条件を満たしているに過ぎず、わずかな改修でもヒナモロコが絶滅する危険があります。竹野地区の農業用水路改修が計画通り実施されれば、絶滅は免れないと予想され、工事の回避以外に本種を保護する方法はないと考えます。
 ヒナモロコは、福岡県のみならず日本国民共通の財産であり、世界の自然遺産でもあります。そのため、生物多様性条約を批准しているわが国においては、本種を保全することは責務でもあり、環境県政を目指す福岡県においてもその重要性を十分認識いただく必要があります。そこで貴県においては、本生息地を保全し、ヒナモロコの保護対策にご尽力を願いたいと考え、以下のことを要望いたします。

1)竹野地区の農業用水路改修計画を見直すとともに、ヒナモロコの生息する農業用水路全域に関しては、県が本種の保護に責任を持つこと。
2)ヒナモロコが生息できる環境を拡大して本種の分布拡大に努めること。
3)ヒナモロコの保護を当該自治体や自然保護団体だけに任せるのではなく、彼らと充分に連携をとりながら、福岡県としても積極的に保護に取り組むこと。


久留米市長 江藤 守國 殿

日本魚類学会会長 松浦啓一

 ヒナモロコの保護・保全に関する緊急要請

 久留米市竹野地区(旧田主丸町)に生息するヒナモロコは、わが国ではこの地域にしかみられない貴重な淡水魚です。本種は環境省のレッドデータブックにおいて絶滅が危惧され(絶滅危惧IA類)、貴市でも天然記念物に指定されています。国外では中国、朝鮮半島にも分布し、約1万年前までつながっていた大陸と日本列島との歴史的関係を示す重要な自然遺産でもあります。
 ヒナモロコは、1960年代までは博多湾と有明海に注ぐ水系の平野部に分布していましたが、1980年代には都市開発や農地開発により激減し、現在では久留米市(旧田主丸町)の竹野地区にしか残っていないとみられます。一時は絶滅したと考えられていましたが、1994年にこの地区で再発見されました。以来、約10年間、地権者とボランティアの方々の努力によってこの地区のヒナモロコは守られてきましたが、生息地はわずか数百メートルの素堀の農業用水路(土水路)です。その生息地がなくなると、わが国のヒナモロコは絶えてしまいます。
 現在、同地区では圃場整備事業による農業用水路の改修が実施されようとしています。すでにヒナモロコが絶滅した他地域での経緯から、本種は水田に連絡する素堀の農業用水路が失われると急激に減少し、絶滅に至ることが分かっています。現在の生息地は本種存続の最低限の条件を満たしているに過ぎず、わずかな改修でもヒナモロコが絶滅する危険があります。竹野地区の農業用水路改修が計画通り実施されれば、絶滅は免れないと予想され、工事の回避以外に本種を保護する方法はないと考えます。
 ヒナモロコは久留米市民の財産であると同時に日本の自然遺産、世界の自然遺産でもあることを十分ご認識いただき、現況の保全と本種の保護対策にご尽力を願いたいと考え、以下のことを要請いたします。

1)ヒナモロコの存在意義をご理解の上、久留米市竹野地区の本種生息地の農業用水路改修を見直し、現況を保全するよう県に上申すること。
2)“クルメウス”などの公的機関にヒナモロコ保護専門の担当者を置くなど、積極的に本種の保護と生息地の拡大に努めること。
3)ヒナモロコの生息状況を常に監視し、保全が十分になされているか、継続的にモニタリングを行なうこと。
4)久留米市内の自然保護団体、教育機関、農家、行政などの連携をはかり、ヒナモロコの保護を組織的にすすめること。