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2016年度日本魚類学会年会シンポジウム
タナゴ亜科魚類の生態とそれらを象徴とした持続可能な流水生態系保全の理論と実践
Theory and practice of sustainable lotic ecosystem conservation in ecology of bitterling fishes (Cyprinidae, Acheilognathinae) and freshwater mussels (Unionidae)


日 時: 2016年9月26日(月)9:00~16:00
場 所: 岐阜大学
コンビーナー: 北村淳一(三重県総合博物館)
 
   
【シンポジウムの趣旨】
 現代の沖積平野の陸水生態系を構成する河川や湖沼,池,農業用水路は,ここ50年の人間の社会活動によりその物理環境は大きく改変された.その結果,その物理環境の構造的な多様性は失われ,それに依存してきた淡水生物の多様性もまた減少した.その中で,これらの沖積平野の特に地形勾配の平坦な陸水域に主に住む淡水生物として,コイ科タナゴ亜科魚類とイシガイ科の淡水二枚貝類がいる.タナゴ類は,卵を生きたイシガイ科二枚貝類の鰓内に産み込み,子は卵黄を吸収し終えるまで貝内で過ごすという特徴的な産卵様式を持つ.一方,淡水二枚貝類は,その幼生期の一部を淡水魚類に寄生して過ごす.この様に,タナゴ類とイシガイ科二枚貝類は,陸水域の物理環境だけでなくその生態系の構成種とも密接に関わり合いを持っており,いわば地形勾配の平坦な陸水域の指標種となりえる.そのタナゴ類とイシガイ科二枚貝類は,現在ではほとんどの種において絶滅が危惧されている.
 タナゴ類やイシガイ科二枚貝類は生息環境特性からみると止水生と流水生に分かれ,湖沼では両タイプが生息するが,面積の小さい池では主に止水生の種のみ生息し,河川では種ごとに止水域(一時水域のたまりを含む)あるいは流水域に分かれて生息する.主に止水生の種が生息する池では,その生態の情報が蓄積され保全の理論や実践が比較的進んでいるが,流水生の種が生息する河川や農業用水路においては,その生態の実体をつかみつつある状態である(以上,北村,2008;根岸ほか,2008参照).
 そこで本シンポジュウムでは主に流水生の種が生息する河川や農業用水路にしぼり,その現状と最新の生態的な知見,および実践的な保全活動を紹介し,流水域の持続可能な環境保全理論の構築を目指す.なお本シンポジウムは同様の趣旨で2010年に日本魚類学会年会で開催しているが、今回はその時から進んできた知見を中心に紹介していく.
 
   

プログラム

第一部 第一部 タナゴ亜科魚類とその産卵母貝となるイシガイ科二枚貝類の生態
 1. 9:00-9:30   趣旨説明とタナゴ亜科魚類とイシガイ科二枚貝類の繁殖生態の概要
北村淳一(三重県総合博物館)
 2. 9:30-9:50 タビラ類における雌繁殖形質の適応的多様化機構
○林 寿樹(福井県立大学)・北村 淳一(三重県総合博物館)・小北 智之(福井県立大学)
3. 9:50-10:10 タナゴ亜科魚類の腸の形態と食性
山野ひとみ(京都水族館)
4. 10:10-10:40   イシガイ目二枚貝の生態と機能
根岸淳二郎(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

第二部 流水域におけるタナゴ亜科魚類の生息環境と保全策
 5. 10:55-11:25   イタセンパラの保全に向けた木曽川におけるワンド群の修復
永山滋也(土木研究所自然共生研究センター)
6. 11:25-11:55 濃尾平野におけるイタセンパラの実態と保全
森 誠一(岐阜経済大学)
7. 13:00-13:30 農の営みが支える希少魚イタセンパラ(富山県氷見市)
西尾正輝(氷見市教育委員会)
8. 13:30-13:50 千葉県におけるミヤコタナゴの現状とその保全の取組
鈴木規慈(千葉県生物多様性センター)
9. 13:50-14:10 霞ヶ浦流入河川および水路におけるタナゴ亜科魚類の生息状況と保全活動
○諸澤崇裕(自然環境研究センター)・萩原富司(土浦の自然を守る会)・熊谷正裕(土浦の自然を守る会)
10. 14:10-14:30 山陰に生息するミナミアカヒレタビラの生態と保全の現状
鴛海智佳(鳥取大学大学院連合農学研究科)
11. 14:45-15:05 河川や用水路におけるタナゴ亜科魚類の生態と現状、および具体的保全策とその戦略~環境省策定の「淡水魚保全のための提言」をもとに~
北村淳一(三重県総合博物館)
12. 15:05-15:30 総合討論